
この前収入の手取り額の話になったんだ。
でも、僕は、個人事業主だから、サラリーマンと違って自分の手取りがいくらなのかよくわからないんだ。

弁護士で個人事業主の僕が、個人事業主の手取り額や計算方法について説明するね。
個人事業主の手取りとは
サラリーマンの場合、手取り額というのは、給料から税金や社会保険料などが天引きされた後に、給与振込口座に振り込まれる金額のことをいいますね。
この手取り額は、それ以上誰かにとられることはないから、自分の生活費や貯金に回すお金として自由に使えますね。
でも、個人事業主は、給料があるわけではないし、税金や社会保険料も自動的に天引きされるわけでもないから、手取り額(自由に使えるお金)がわかりにくいんですよ。

じゃあ、個人事業主は、手取り額のことなんて考えなくてもいいのかな?
たしかに、個人事業主が自分の手取り額を1円単位で細かく知っておく必要はありません。
でも、個人事業主も大まかな手取り額を把握していないと、いくらの家賃のところに住めばいいか、毎月の生活費はいくらまで支出しても大丈夫か、いくら貯金できるのかなどがわからなくなってしまいます。
なので、個人事業主は自分の手取り額がわかりにくいんですが、それでもしっかり把握しておく必要があるんです。
年商と手取り額の違い
個人事業主の友人が、「俺は年商3000万円だ」って言ってたんだけど、あれは手取り額と関係あるのかな?
年商は手取額とは全く関係ないんだ。
「年商」は売上の金額です。なので年商3000万円でも経費がそれ以上にかかっていれば手取り額は0円、それどころかマイナスだってこともあるんです。
年収と手取額の違い
別の個人事業主の友人は、「私は年収1000万円よ」と言っていました。
これは手取額ですかね?
個人事業主の「年収」は手取り額とは違うんだ。でも年収から大体の手取額はわかるね。
個人事業主がいう「年収」というのは、「売上から経費を引いた額」のことを指していることが多いです。
この金額は、税金や社会保険料を引く前の金額なので、手取額とは違います。
また、もし事業資金の借入をしている場合には、その毎月の返済も事業所得から引かれるので、自由に使えるお金=手取額はもっと少なくなることもあります。
個人事業主の手取りの計算方法
結局、個人事業主の手取り額はどうすればわかるの?
それでは、早速、個人事業主の手取り額の計算方法を説明するね。
具体例があった方がわかりやすいと思うので、次の個人事業主を例に計算するね。
1 「年収」を計算する
まずは、個人事業主としての「年収」を計算しましょう。
ある年の売上から経費を引くと「年収」が出ます。
Aさんの場合は、売上1200万円-経費400万円=年収800万円になります。
賃貸契約のときに審査とかで年収どれくらい?と聞かれたら「800万円」と答えましょう。
2 「課税所得」を計算する
手取り額を出すためには、次に「課税所得」を計算する必要があります。
「課税所得」の計算方法は、「年収」から次の「所得控除」を引きます。
- 青色申告特別控除 65万円
- 基礎控除 48万円(住民税43万円)
- 国民年金 約20万円(月1万7000円)
- 国民健康保険 約60万円(月5万円)
控除額合計 193万円
そうすると、Aさんの課税所得は、年収800万円-上記合計193万円=607万円となります。
3 「手取り額」を計算する
次に、手取り額を計算するには、まず、上で計算した「課税所得」から税金分を引きます。
課税所得607万円の個人事業主の税金
- 所得税:約80万円
- 住民税:約60万円
- 消費税:約60万円(税率10%・簡易課税みなし仕入れ率50%)
- 個人事業税:約25万円
税金合計:約225万円
そうすると、事業所得607万円-税金225万円=382万円となります。

手取り額は、382万ってこと?年収800万なのに少なすぎない?

手取り額を計算するには、課税所得を出すときに年収から控除した金額の内、実際には手元から出していない分を加算するんだ。
そうすると、Aさんの手取り額は、382万円+65万円(青色申告特別控除)+48万円(基礎控除)=495万円となります。
これで、年商1200万、年収800万の個人事業主Aさんの手取り額は495万円であることがわかりましたね。
月の手取り額にすると、約41万円です。結構な高収入ですね。月41万円を自由に使えることになります。
しかも、仕事でかかる費用(パソコン代・自宅で働く場合は家賃や光熱費の一部)などは既に経費として引かれているので、Aさんはこの41万円をサラリーマンよりもさらに自由に使えることが多いです。
個人事業主の手取り一覧
それでは、さっきの個人事業主Aさんが、どんどん仕事が増えて年収が上がったときのおおよその手取り額も見てみましょう。
逆に、年収が下がってしまったときの手取り額も見てみます。
ここでは、個人事業税は翌年の経費として算入し、手取りからは引かないことにします。
年収3000万の手取り額
この場合、個人事業主Aさんは、年収から、所得税840万、住民税280万、消費税150万、国民年金20万、健康保険84万くらいが引かれます。
なので、手取りは、約1600万円ですね。
年収2000万の手取り額
この場合、個人事業主Aさんは、年収から、所得税440万、住民税180万、消費税100万、国民年金20万、健康保険万くらいが引かれます。
なので、手取りは、約1200万円ですね。
年収500万の手取り額
この場合、個人事業主Aさんは、年収から、所得税26万、住民税34万、消費税0円(非課税事業者適用)、国民年金20万、健康保険30万くらいが引かれます。
なので、手取りは、約390万円ですね。
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